コラム

<じわじわな人々> 薬草や発酵の民俗文化を伝え、 心から「好きなこと」で生きる『里山文庫』まえだちさとさん

2020.05.15


せわしなく過ぎていく日々のなかで、じぶん自身が本当に心地よいと感じる暮らし方を探り、かたちにしていく人はどれだけいるでしょうか。このコラムでは、じわじわと湧き上がる「心の声」に耳を傾け、自分らしさを大切にする人をご紹介します。


今回お話をお聞きしたのは、奈良を拠点に『里山文庫』という活動をされている、まえだちさとさん。心から「好きなこと」で働き、生きていくことに向き合う姿が素敵な女性です。  






先人の知恵を伝える「里山文庫」のこと



−どんな取り組みをされていますか?


まえださん:観光ツアー・体験イベント・ブログ配信を通じて、日本古来の発酵・薬草などの日本の民俗文化を、国内外の人々に伝えています。外国人には農業の産地を案内したり、日本人には発酵や薬草のワークショップを企画したり、という活動です。2018年に独立して2年が経ちました。

 


▲薬草酒づくりのワークショップ



—『里山文庫』をはじめるまでは、何をされていたのですか?


まえださん:実は、京都の自治体で公務員をしていました。今やっている古来の農業や民俗文化にもともと関心があったわけではないんです。学生時代は国際活動や地域開発に関心があったので、海外に携わることや公共政策にしぼって就職活動をした結果、公務員を選びました。当時は、「フリーランス」や「起業」という働き方を知らなくて、高校を卒業したら大学に進学して、民間企業か官公庁に就職するという選択肢しか知らなかったな、と思います。働きはじめて数年が経ったときに、自身の意思決定が求められないことにモヤモヤしはじめて…もっとじぶんで考えて決められる働き方をしたい、と感じたんです。29才のときでした。



日本と東アジアの民俗文化と出会う


—大きな転機となるきっかけがあったのですか?


まえださん:前職時代、京都の丹後半島でローカルな暮らしを伝えるイベント運営の担当になったんです。官民の垣根は関係なく、地元の住民や事業者の方たちと一緒に、昔からある知恵や在来品種、雑穀の魅力を伝えるイベントを企画し、そこでフリーランスの人たちと初めて出会って一緒に仕事をしました。地域おこし協力隊だったりデザイナーだったり、枠に捉われず創造的な仕事をしていて刺激を受けて… わたしもそんな働き方がしたいと思ったんですね。


▲丹後のイベント「雑穀みゅーじあむ」



イベントを通じて、村のおじいちゃん・おばあちゃんに昔の野菜の食べ方・育て方を聞く活動をし、農業への関心が深まったことも大きなきっかけになりました。当時、わたしは職場がある丹後半島に住んでいて、まわりが農家さんばっかりだったので、自分で畑を借りて農業をはじめていたんです。「農業をやるなら詳しく学びたい」と、もともと国際的な仕事をしたかったのもあって、休職してオランダの農業大学院へ留学することを決めました。


 

 ー休職して海外留学する、という選択肢をとったまえださん。気になること・楽しいと感じることを探求する力をお持ちなのだなぁとうらやましく感じます。留学では、どんなことを感じられたのですか?


まえださん:オランダでは、最先端の有機農業に触れました。文系・理系を問わず動物科学・土壌学・消費者行動学などのさまざまな研究分野があって、科学的な農場分析をベースに最新技術を使った効率的な水耕栽培が行われていました。一方で、在学中にブータンやインド、ネパールなど訪れる機会があったんです。農機具はほとんどなくて耕す道具は牛だけみたいな(笑)、トイレやお風呂、電気もないなかで人がどう生活しているか、今までにない視点をもらえました。そして「古来の民俗的な農法は、科学的に解明されていないことが多いけれど、とても合理的だ」と感じました。伝承されてきた先人たちの知恵に関心が湧いたんです。もともと学生時代に関心があった、地域開発と繋がるところがあったかもしれません。

 

▲ブータン時代のようす


 

じぶんで「決める」道を歩く



—帰国してから、すぐにフリーランスになられたのですか?


まえださん: いえ、2年後に帰国してから、また公務員として働きながら、古来の農業や民俗文化など同じようなことに関心を持っている人たちと集まって聞き書きをはじめたんです。しばらくは休日に、地元の人たちと交流して在来種の種を保存する活動をしていたのですが、「フリーランスの方々の働き方をみていていいな」といっそう思うようになって。当時、仕事に対してモヤモヤと感じていた自分の意思決定を求められない閉塞感を、好きなことを仕事として選ぶことで解消しようと考えはじめました。

 


—月並みな質問ですが、いわゆる「起業」に不安はなかったのですか?


まえださん:起業への不安より、前職をつづけることの方が、わたしにとってはむずかしいなと感じたんです(笑)。在職中から活動していることをブログに書いて情報発信していたのですが、地域の魅力的な場所を紹介していたら、ブログの読者から「行ってみたい」というコメントをもらうようになって。まずは集客を学ぼうと思って、まずは旅行会社に転職しました。その後、奈良で農業に携わる機会があって、そこから奈良に移住したんです。2年前に、完全にフリーランスとして独立して『里山文庫』の活動をしています。ここ最近は、薬草と発酵に興味があって、ワークショップや講座を企画して開催することもありますね。


▲薬草納豆づくり


—フリーランスは自由ばかりではないと思うのですが、不自由なことはありますか?


まえださん:現在は、日本全国にツアーガイドとして同伴する機会が多くて、いつも旅行をしているような感覚です。ツアーの企画から携わることもあるのですが、大企業のようには時間もお金もかけられず、初めて案内する場所でも下見に行けないことがあります。先日は、静岡のわさび農家さんにぶっつけ本番でガイドをしてきました。もちろん事前にお電話で打ち合わせしたのですが、当日は内心ひやひやした想いでお客さんを案内しています(笑)。

 


より心地よく「暮らす」日々へ



—こうなりたい、という理想はありますか?


まえださん:奈良に特化した奥深い歴史や文化を伝えるツアーをつくりたいです。これまで日本全国をまわったり海外にも出向いたり旅している日々を送ってきて、どこか地に足がついていないように感じているんです。土地に根付きたい、というか、もっと自分自身が「暮らす」ことを大切にする生活にシフトしたいなという想いがあって。里山の暮らしを体現する拠点をつくっていきたいなぁと。畑をしたい、学んだことを実践にうつしたい、楽しく生きたい。「自分が好きなことで生きたい」がベースにあります。 『里山文庫』の取り組みに関心をもってくれる仲間を増やし、ゆるく繋がるコミュニティを作りたいと思っています。


 

  「好きなこと」を仕事にしたい、と公務員からフリーランスになり現在は『里山文庫』の企画運営をしているまえださん。ツアーガイドとして日本全国を旅するなかで、日々の暮らしをより大切にしたいという気持ちと向き合い、自身の働き方だけでなく、生き方を軌道修正しながら理想に近づけているのが印象的でした。

つい最近、奈良県天理市にある築100年の古民家に『里山文庫』の拠点を移された、まえださん。持ち前のバイタリティで仲間たちと共にDIYのリノベーションが猛スピードで進んでいます。



            ▲洗面ボウルをDIYする、まえださん

  

「こうあるべき」ではなく「こうありたい」という自分自身の素直な気持ちを大切にするあり方に、じわじわと心を動かされるのでした。

好きなことで生きていくことを楽しむまえださんの模索は、これからも続いていきそうです。

 

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